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先払い式の給与制度で社員へのスタンスを示す/実行力を引き上げる人事のツボ

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

先払い式の給与制度で社員へのスタンスを示す

株式会社日本経営 / 波多野 裕太

2023年に入り、物価上昇やインフレ率を上回る賃上げが必要との判断から、上場企業を中心に賃上げが進んでいます。一方で、30年以上にわたり、物価上昇率を加味した実質賃金は下がり続けており、「日本企業は必要以上に賃上げをしない」きらいがあることは否めません。

法人企業統計(財務省)によると、日本企業の内部留保は10年にわたり過去最高を記録しています。このような傾向は、果たして、全ての企業に通底するものでしょうか?

先払いの給与制度で人材に投資する

ニッチ業界No.1企業や、成長著しい企業では、中小規模でありながらも、積極的に賃上げする企業を多く目にします。

こうした企業の経営者に、給与に対する考え方について尋ねてみると、以下のような回答をいただきます。

「業界No.1の給与を支給したい」
「努力して働くほど報われる職場にしていきたい」
「社員の生活を豊かにすることは、社長の責務だと思う」


このような企業では、人件費を「費用」ではなく「投資」と捉え、先払い式で給与を払っているケースが散見されます。

会計において人件費は、P/L上で「費用」とされますが、経営資源である人材は、「将来企業に付加価値を創出する資産」にほかなりません。

先払い式とは「業績が上がった結果として給与を上げる」のではなく、「先んじて賃上げを行い、人への投資を通じて業績を向上させる」という考え方です。

賃上げの原資は利益であり、人件費率には目安がある

業績向上が著しい企業がすべからく賃上げをしているわけではないでしょうし、賃上げを実施している企業が必ず業績向上を実現しているとは限りません。

しかし、業績が上がっていないのに賃上げできるのかというと、答えはNOです。

賃上げの原資は利益であり、利益は事業種別によって、おおよそのアッパーがあります。つまり、経営を圧迫せず健全経営を行うための、人件費率の目安があります。

だからこそ多くの企業では、業績向上によって生まれた利益を原資として給与を上げるのです。

では、先払い式の給与を実現する企業では、どのようにしてそれを実現しているのでしょうか。

どのようにして、給与の先払いを実現するのか

先払い式の給与制度を取り入れる会社では、「社員に対して給与制度の仕組みを公開する」だけでなく、「給与に対する経営者の考え方を明白に」しています。

例えば、「当社はプロに相応しい高待遇を実現します。具体的には、3年後に平均年収○○万円を目指します」と、売上や利益目標などと並列で、社員への対価を目標に据えます。

社員の給与を上げることに経営者が責任を持ち、達成すべき指標として事業計画に位置付けているのです。

このように経営者が「社員に対するスタンス」を示すことが、結果的に社員のやる気を高め、組織の実行力を引き上げるのだと思います。

経営者が明らかにする4つのスタンス

ところで、先払い式の給与を実現する企業ほど、社員の仕事ぶりはシビアに評価します。

昨年と同じ仕事をしていては、その社員の値打ちは変わりません。

毎期の実現すべき成果を明確にするだけでなく、少しずつの背伸びを促し、高い目標にチャレンジしてもらう仕掛けを作る必要があります。

自身への期待、投資に対して実現すべきことが明確なので、社員は難易度が高い目標に挑戦し、業務改革や生産性向上にも積極的に取り組みます。

逆に、企業努力の結果として毎年の昇給が実現されていたとしても、期待や意味を伝えることができていなければ、賃上げの効果は半減します。

毎年の安定した昇給は、得てして「給与は当たり前にもらえるもの(=)既得権益」という認識を作ってしまうからです。

私たちのコンサルティングでは、経営者トップの方針として

1.顧客に対するスタンス(顧客に対してどのような価値を提供するか、等)
2.社員に対するスタンス(弊社の社員であることの良さを明確に伝えられるか、等)
3.社会に対するスタンス(社会に対してどのような貢献するか、等)
4.社員に求めるスタンス(社員として絶対に拘ることは何か、等)

の4つの姿勢を明確にします。

顧客や社会へのスタンスは明確にしていても、社員へのメッセージが明らかではない企業は意外に多いです。

今回は、「社員への投資を第一に考え積極的に給与を上げる会社」では、「社員へのスタンスを明確にする」とともに、「社員に期待する成果を年々高め続けている」ことをご紹介しました。

とはいっても、冒頭記載したように、業績が伴わない先払いは企業経営を圧迫します。

また、経営者が描いた戦略上の失敗、あるいは震災や金融危機など、社員の努力と無関係な事象も起こり得ます。

我々コンサルタントは、組織マネジメントの専門性を武器に、経営者の想い、健全経営の両面を実現できるようサポートします。

このレポートの解説者

波多野裕太(はたのゆうた)
株式会社 日本経営 コンサルタント

東日本の企業に対して、人事制度の導入・見直し、組織文化・風土の改革、人事改革を通じたグループガバナンスの構築、キャリアパスの作成などの業務に携わる。顧客層はスタートアップから上場企業までを幅広く支援。
「笑顔溢れる組織作り」をモットーに、現場に深く入り込んだ支援で定評がある。明るいキャラクターと起爆剤としての熱量が武器。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。


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